【コミック3位】『しっぽにキッス きまぐれ弾丸ハニー』shiwo【アリス】

しっぽにキッスきまぐれ弾丸ハニー (オークラコミックス)しっぽにキッスきまぐれ弾丸ハニー (オークラコミックス)
shiwo

オークラ出版 2010-07-12


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しらすはねこまただ。
猫だったころに大好きだった「あの人」を探して旅をしている、それがしらす。しかし行き交う人が好き勝手に名前を呼んでいく中で、しらすと名前をつけて世話をしてくれているのが、獣医の片瀬だ。「あの人」に似ていると想って声をかけたのに、実は唯の変態だった片瀬は、大の猫好き。しらすは驚いた表紙にとびでた二本のしっぽをみられてしまう。そしてそのしっぽを見初めた片瀬は、ご飯と一週間に一回の「触診」とを引き替えにしらすを居候にする。
獣医の片瀬を手伝ううちに、あの人への思慕も募る。けれど飼い猫が突然出て行ってしまいそのまま帰ってこなかった倉本さんの姿をみるうちに、しらすも何も言わずに去られてしまう悲しさを想ったりする。
とにかく猫萌え!いちいちしらすの猫パートが気合いが入ってます。しらすの人間の時の姿もかわいらしく、片瀬はあれこれ洋服を着せていてそれもかわいいです。でも猫のときの仕草一つ一つに愛を感じます。猫のようなしらすの仕草もかわいらしい。本当に作者が好きで書いているんだなというのが伝わってくるのが大きな魅力です。
そして何より魅力的なのが、この物語の大きなテーマとなっている、「お話」があります。それはしらすが猫がいなくなってもう帰ってこないのではないかと心配して、毎日ご飯も欠かさず用意して探し回る倉本さんに話した「お話」。猫は恩を忘れない。猫は幸せ-ありがとう-をしっぽにためこんで、しっぽに幸せがはいりきらなくなったら猫又になる。猫又になると大好きなひととわかれなければいけない。他の猫にも幸せ-ありがとう-が行き渡るように。猫又はしっぽに幸せをいっぱいためて七本のしっぽになると大好きなひとに会えるんだとしらすは言います。しらすがいなくなった猫を心配する倉本さんに、その心配を軽くするための「お話」であるのではなく、しらす自身が「そうであればいいな」と願っていることなのです。このテーマ自体が作者自身の願いでもあります。それがこの物語を活き活きとしたものにしているのです。
作者の強い気持ちが響いて、温かい物語となっているのがこれなのです。唯単純に猫が可愛いだけなのもあるのですが、その可愛さには作者の願いがあればこそなのです。大作だ!とか話がすごい!といったものではないのですが、その話だけがもつ魅力的なものが光り、大切にしたいと想わせる、そういった話でした。