【コミック6位】『声しか好きじゃない』真枝真弓【ウサギ】

声しか好きじゃない (花音コミックス)声しか好きじゃない (花音コミックス)
真枝 真弓

芳文社 2010-04-30


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声フェチのリーマン伊京は冴えない部下・峰生の声でメロメロに。強引にカラオケに連れ出し、その声を堪能した伊京は思い余って峰生を襲い、関係を持ってしまう。気がつけば、声良し顔良し、身体の相性も良くて自分の言う事を聞く峰生にハマってしまう伊京。だがついに「声」目当てだと峰生に気付かれ、一方的に振られてしまい……。
今年のBLを語るキーワードとして、擬人化・越境作家に加えてフェチものというのを挙げたい。眼鏡フェチ、洋服フェチ、指フェチに耳フェチ、ストッキングフェチと様々なフェティシズムがあったが、一番欲望に素直だったと感じるのがこの『声しか好きじゃない』。フェチものの場合、展開としては二つに分けられる。一つはフェチから始まったけどお前が好きだからもうお前だけだ、お前が不安ならフェチ趣味はやめる!というバージョン。もう一つが、フェチから始まって、二人でフェチを極めて行くタイプ。個人的には、フェチならフェチを極めて欲しいと思う。だって、フェチの対象が自分を好きになってくれたら、やっぱり嬉しい。そうなったらフェチ対象がますます好きになる、そういうループじゃない? と思うわけです。お前が好きだから他のフェチには目が行かない、なんて嘘ですよ嘘。人間そんなに簡単には変わらないし。フェチだろうかなんだろうが、かけがえの無い何かならそれでいいじゃない。「優しさ」や「性格」なんて根拠よりずっと具体的で萌える! と思うのは自分だけだろうか?
本作の主人公、伊京は清々しいほどの声フェチっぷり。美声が好きというわけではなく、ただ「声が俺の好みなだけ」「仕方ねーじゃん、俺ってこういう男なんだよ」と言い切る様はいっそ男前。そんな男に「お前の声が無いと死ぬ」なんてしおらしく言われちゃったりしたら、そりゃもう胸キュンです。他を探したほうが賢いってどんなに思っていても、それじゃあ代わりにはならない、本能に訴えかける理屈では抗えない感情。間違いなく恋じゃないですか?
一方の峰生は典型的なオタクでへたれ。そもそも人には言えない趣味を突き進むフェチとオタクは相性がいい。受けフェチとでも言うべきオタク攻め作品も今年の個人的ヒットだったりして、二重の意味でオススメ。フェチ趣味もオタク趣味も受け入れてこその愛ですよね。