BL? レディコミ? 『腐ォロー』葉月つや子
なんとなくテーマレビュー、3つめ。
水城せとなの『窮鼠はチーズの夢を見る』『俎上の鯉は二度跳ねる』でレディコミ誌掲載のBL作品が注目を集めたのは記憶に新しいところですが、それとはまた大分毛色の変わった、レディコミ系BL(って意味不明なジャンル分けですが)です。
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で、作品ですが。表題作は、弱気な娘婿が来たはいいけど、娘死んじゃったわー、引きこもり息子が婿を好きみたい、えーいくっつけちゃえ! 婿がいなくならないではっぴー!……という、突き抜けた姑視点の話。なにそれこわい。展開も怖いけど、姑が普通に怖い。化粧が濃くて…すごく、おばさん。BLに出てくる女性臭の薄い女性描写に慣らされた身にはちょっと怖いです。重いです。
二作目以降は、あんまり女性は出てきませんが、グレた息子と同級生を義母がフォロー、ヒモ大学生と借金取りを水商売女の息子がフォロー、父親と中学の同級生を息子がフォロー、息子たちに裏切られた社長さんを遊び人の役者志望が遊ぶ…つもりがお互い陥落、とまあちょっとマニアックかな? というカップリングもあるものの、普通のBL展開。
ただし、絵がすごく独特(表紙のカラーよりも中の白黒の方が癖がある絵)なうえに、濡れ場がとにかくねちっこく、さらにスネ毛とか局部とか無駄に描き込まれており、絵だけで無理、というひとは居そう。正直、自分は苦手です。構図も、多分レディコミとか男性向けの構図なのかな、ちょっと見慣れない感じ。あと、ほっっっっっっっっとんど消しが入ってないです。濡れ場自体の量も、ジュネット系の特に多いのと同じくらいあると思われ、アクアコミックスだと思って油断して買うと、ちょっとびっくりするかも。
キャラの顔なんかはたまに「おっ?」っというような艶っぽい表情もあったりして、上手いひとなんだとは思います。でもやっぱり濃い……。ていうかこの絵で女の子見て楽しいのだろうか。この本には微妙な熟女しか出てこないけど、若者〜中年の男はそれなりに魅力的に描き分けてるから、いけるのかも? 子供は描けてないけど。
ただ、話の展開とかは、本当に普通の過激系BLと変わらないんですよね。特に三話目以降。描き下ろしの「孤城腐ちて」とか、展開的には嫌いじゃないです。
水城せとなは、レディコミでもBLでもない世界をBLの絵とレディコミの文脈で描いたけれど、こちらはBLの世界をレディコミの絵と文脈で描いた、とでも言いましょうか。その取り合わせを楽しめるかどうか、が許容出来るか否かの境目のように思います
最近BLにも飽きてきて、ちょっとキワモノも読んでみたいのよねー、という方には、おすすめかもしれません。
ちなみに中の絵はこんな感じ。左上:攻、右上:姑、下:受(婿)
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