BL本、華麗なる帯芸の世界 『オニぱんつ』『駄目ッ子インキュバス』ほか

なんとなくテーマレビュー、4つ目。
今回は作品本体ではなく、その付属物であるところの帯について。
まあ、BLの帯にネタが多いというのは最近ではよく知られた事実になりつつあると思います。なんといっても、殆どのBL本は月末〜月初にかけての約10日ほどの間に出版され、毎月数十冊が平台でしのぎを削るわけです。どんなに表紙の絵が綺麗だろうと、それだけでは負けてしまいます。というか、BLの表紙なんて大体が「男ふたりがひっついている」という構図であり、制服でも無い限りメイン登場人物の容姿以外の属性は伝わりません。
そこで重要になってくるのが「帯」です。
例えば、ジュネットレビューで紹介したこの本。
ふしだらな撮影会(ジュネットコミックス ピアスシリーズ)
ふしだらな撮影会(ジュネットコミックス ピアスシリーズ)
これにこの帯

が付くことにより、よりインパクトが増し、情報量も圧倒的に増えるわけです。
個人的にはBL帯は画像で見てこそ、だと思っています。テキストだけでは、とてもそのインパクトは伝わらない。フォント芸とかもあるし。
そんなこともあって、同人誌版『本当はこのBLがすごい!』の書影は全て(手元にある限り)帯付きです。帯も含めて、商品としてのデザインになっていると思うので。
また、BL特有(と思われる)帯の役目に、表紙の下の方を隠す、という役割があります。例えば上記の本では、ちょうど受の少年の下腹あたりが帯で隠されています。これにより「え、もしかしてはいてないの?!」というドキワク効果と「はいてないとしても、見えないから(レジに持っていくのが)恥ずかしくない!」という安心感の二重の効果が得られます。
たまに、帯の下が本当にはいてないことがあってびっくりしますが、でも帯があれば安心です。
まあ、帯の方が表紙より恥ずかしい、ということもままありますが、それはさておき。


ということで、上半期の中で帯がすごかった、もしくは酷かった作品紹介です。

駄目ッ子インキュバス (二見シャレード文庫)駄目ッ子インキュバス (二見シャレード文庫)
海野幸
琥狗 ハヤテ

二見書房 2009-12-18
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落ちこぼれインキュバスが魔界の貴族を誘惑する、という話。最終的には運命の純愛展開。何度出会っても恋をする!的な。最後のそこの説明がもう少し綺麗にできていたら、良かったんですが。ちょっとご都合主義&説明的展開なのが残念。
帯は、こちら。

作中の言葉を抜き出すという、小説帯ではよくあるパターンですが、インパクトは大です。ちなみになんかBL帯で有名な「エクスカリバー」もこのパターンです。
さらに下に小さな文字で

落ちこぼれインキュバスのタキは、魔界一美しく聡明なクライブ公爵を誘惑。
だが、想像を絶するおぼこさで、今回も失敗に終わると思いきや…!?

インキュバスなのに、下手。インキュバスなのに、おぼこい。インキュバスなのに。
あとこの表紙、はいてないですね…。
大丈夫です。ちょうど腰のあたりから下は、帯に隠れてます。

  • 『恋するよりも脱がせたい!』 藍音しのぶ

恋するよりも脱がせたい! (ビーボーイコミックス)恋するよりも脱がせたい! (ビーボーイコミックス)

リブレ出版 2009-11-10
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服屋の店員が、客に一目惚れして服を選びまくり、それを脱がせたい…!と妄想していたら本当に、という話。話のテンポもよく、エロも色っぽくて、佳作だと思います。服&スタイルフェチってわかりやすいしね。
帯は

これ、店員の台詞です。ただし、作中にこの台詞はありません。
何か間違ってる…!という感じが、購買意欲をそそります。作中のシーンと組み合わせているのもポイントが高いです。
ちなみに裏面は

短編集ではよくある、総カップリング紹介です。

  • 『恋の花咲く夜もある』 新也美樹

恋の花咲く夜もある (花音コミックス Cita Citaシリーズ)恋の花咲く夜もある (花音コミックス Cita Citaシリーズ)

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御馬鹿系BLの宝庫、新也美樹の作品。夜の顔と昼の顔を持つ攻(華道の家元)が、ひょんなことから夜の自分と昼の自分と受の三角関係に陥ってしまうという作品。新也節全開です。自分に嫉妬しまくるという矛盾がありがちだけどイイ。
その帯はというと、

言葉に加え、フォント芸が効いてます。ガッポリ…。裏はというと、

これはひどいですね。華道でカビンて!上手いこと言ったと思うなよ!

  • 『オニぱんつ』 青山あると

今期の、ベストオブ帯です。というか、タイトルと表紙からして、神がかってます…。

オニぱんつ (GUSH mania COMICS)オニぱんつ (GUSH mania COMICS)

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明らかにはいてないですね…。咥えてるし。
あ、乳首は帯で隠れてます。もはやどうでもいいですが。
中身は、男の子が除霊と称して陰陽師にイロイロされちゃうんだけど、実は男の子は陰陽師が誓い合った鬼の生まれ変わりで…という、とてもあたまのわるいネタです。ネタとプロットは結構いいのですが(特に言葉責め方面)、残念ながら絵が追いついてないなぁ、という感じ。表紙やピンナップのイラストはまだしも、コミックになると全体的に絵が荒い。この勢いのまま、表紙なみの絵で展開したら、作品としても神がかってたと思います。
で、帯。

これはひどい…。即買いでした。
言葉選びと、フォント芸の勝利ですね。
ちなみに、手元に無いのですが、同じ時期に店頭に並んでいたものに

超絶技巧!やおいの嵐!

という帯がありました。これもなかなか。