【コミック2位】『ダブルミンツ』中村明日美子(EDGE COMICS)【やばい】

ダブルミンツ(EDGE COMIX)ダブルミンツ(EDGE COMIX)

茜新社 2009-07-24
中村明日美子

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みつおとミツオ。同姓同名の二人は高校の同級生。二人の人生が再び重なった時、過去になったはずの熱病のような関係が再び幕を開ける。
支配するのはみつおで支配されるのはミツオ。求めるのはミツオで求められるのはみつお。鏡写しのような関係。魂の双子というモチーフはBLにおいても少女漫画においてもそれほど目新しいものではない。むしろありきたりなものであるとさえ言える。不安定な少年少女たちは様々な形で魂のかたわれを求める。相棒、親友、兄弟、あるいは運命の恋人。
SはサディズムのS、MはマゾヒズムのM。SはスレイブのS、MはマスターのM。これもよくあるおはなし。みつおはミツオを暴力で傷付ける。だがそれを求め、二人の関係をコントロールしているのは暴力を振るわれているミツオの方だ。みつおがミツオを殴り蹴りつけるが、ミツオの方はみつおの殺した女の死体を隠し、みつおのレイプ映像を手に入れてみつおを追い詰める。肉体的痛みと精神的痛み。より深く相手を傷付けているのはどちらだろう。最後にはミツオもみつおも自身を傷付け、それまでの自分に別れを告げる。不良と平凡な学生、チンピラと勤勉な社会人というレッテルで二人を引き離し続けた社会そのものに別れを告げるかのように。
この物語を印象的なものとしているのは言うまでもなく中村明日美子の描く目だ。要所要所で読者に突き付けられる強い視線が、読者を当事者にする。彼らの痛みは、読者の痛みに同化する。
個人的には、読み切りで終わるはずだったという一話の終わり方が好きだ。秘密という脆い糸で繋がり、支配と被支配を逆転させる二人。簡潔で美しい。


ネタとしてはありきたり。でも中村明日美子の絵と味付けに価値があるんだろうなー、という。痛々しいと評判のようですが、そんな言うほどでも無いし。作品としての完成度は高いし、評価は妥当と思います。