【コミック4位】『テレビくんの気持ち』松本ミーコハウス(バーズコミックス ルチルコレクション)【やばい】

テレビくんの気持ち (バーズコミックス ルチルコレクション)テレビくんの気持ち (バーズコミックス ルチルコレクション)

幻冬舎コミックス 2009-04-24
松本ミーコハウス

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アイドルと幼馴染、アイドルとマネージャー、コンビニ店長と真面目な本社社員、と3つのカップルをそれぞれの視点から綴った連作短編集。
彼はどうして彼を好きになったのだろう。BLというジャンルで、恋愛を演じるために生まれてきた彼らにそんなことを問うのは愚問かもしれないが、だからこそ考えてしまうこともある。容姿が好みだったから、性格が好みだったから、優しくしてくれたから、辛い時にそばにいてくれたから。ごちゃごちゃした理屈をいろいろ並べることは可能だが、一番多い理由は「相手が好いてくれたから」ではないかと思う。相手の「好き」の表現が心を動かすのだ。そして、松本ミーコハウスの「好き」の表現はとてもシンプルだ。赤面、涙、甘え、鼓動、欲情。シンプルで隠せない感情表現のシンプルな描写だからこそ、相手の心を容易に浮き立たせ、読者の胸さえも射抜いてしまう。特に赤面と涙は見ていて恥ずかしくなるほどの乙女っぷり。
また、この本を個々のエピソードではなく作品集として見たならば、作者の明らかな成長のあとが見える作品集、と言えるだろう。絵も「好き」の表現も、だんだんと細やかな心の機微を描くようになっていく。「好いてくれたから」だけではない「好き」が見えてくる。「好いてくれても」安心できない「好き」が見えるようになってくる。それは後半に描かれるカップルごとの追加エピソードで特に顕著になる。作者の成長とカップルの恋の成長が重なり、読者は二重の満足感を得ることになる。そして最後の「脇役くんたちの気持ち」での恋愛未満のふわふわとした空気が、彼らの未来と作者の未来への期待を抱かせる。この構成がどこまで意識されたものか分からないが、効果的な構成といえる。
新人作家の荒削りな初々しさと純情アイドルの恋の初々しさがちょうどマッチした良作。難点を挙げるとすれば「好き」の始まりがちょっと見えないところ。特にアイドル&マネージャーカップルは設定がありがちなだけにもう少し何かが欲しい。


一言で言えば「期待の持てる新人作家」。今後伸びてくる作家さんと思います。ただ、今のところは初々しさと勢いが持ち味なので、それが薄れれた頃に何が出てくるかは未知数。

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