【コミック6位】『たかが恋だろ』英田サキ(原作)・山田ユギ(作画)(ミリオンコミックス)【やばい】

たかが恋だろ (ミリオンコミックス Hertz Series 61)たかが恋だろ (ミリオンコミックス Hertz Series 61)
英田 サキ
山田ユギ

大洋図書 2009-07-03


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

妻に先立たれ、義兄に支えられて子供を育てている倉田泉巳は、ある朝、中学の同級生だった高津戸真と再会する。彼は中学時代の親友であり、卒業と同時に一方的な絶縁を言い渡された相手でもあった。
小説原作のコミックというのはよくあるものだが、BLの場合それが成功することは殆ど無いと言っていい。一番の理由としては、小説とコミックの密度の違いがある。特にBLでは一冊の小説に対して一冊のコミックで済ませてしまうことが多いため、どうしても描写の濃度もエピソードの印象も薄っぺらなものになってしまう。この作品では、元となる小説があるのではなく、漫画を想定して原作が書き下ろされているため、いくぶんかそのような傾向は薄れているが、それでも少しエピソードを詰め込みすぎの感がある。そして、薄いエピソード描写の中でも伏線的要素はしっかり描き込まれているため、誰が読んでも先の展開が読めてしまうのも残念。また、英田サキの原作では周辺に配されていたと思われる子供たちと泉巳の義兄・椹木が山田ユギの絵によって魅力的に描かれすぎてしまい、メインのカップルを食ってしまっているような部分もあれば、英田サキの毒気を山田ユギのコミカルな絵が打ち消してしまっている部分もある。どうにもバランスが悪い印象が拭えない。
とはいえ、原作・作画とも実力派の作家であり、全体としては魅力的な作品に仕上がっている。子供たちは可愛らしいし、椹木は色っぽい。恋愛とも家族愛とも付かない椹木への想いと高津戸の間で揺れる泉巳の描写や、重さを感じさせる空気感もいい。高津戸は……正直ちょっと美味しいとこ取りすぎやしないかと思う。泉巳の中で椹木が埋めていた部分をどうしていくのかという意味で、この二人のこれからも見てみたい。


英田サキ山田ユギ、ついでに帯に石田育絵って売れないわけがない。実際売れたのでしょう。が、「それなり」のBLでしか無いという印象。英田サキ山田ユギともに思い入れの無い自分としては評価は低めになります。