【小説3位】『15センチメートル未満の恋』砂原糖子・南野ましろ(絵)(新書館ディアプラス文庫)【アリス】

15センチメートル未満の恋 (新書館ディアプラス文庫)
15センチメートル未満の恋 (新書館ディアプラス文庫)南野 ましろ

新書館 2009-06-10
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おすすめ平均 star
starちっちゃいけど、
star色モノの骨頂

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ある日階段から落っこちて目が覚めると、雪見は身体が小さくなっていた!


雪見はドールハウスづくりを生業としている。そのドールハウスの基準は1/12サイズ。雪見はその丁度1/12サイズになっていたのだ。その場に丁度居合わせた同業者で大学の同輩の伏木野は雪見を連れ帰り、一風変わった同居生活がスタートする。雪見は伏木野のことが嫌いで、彼の作るドールハウスも大嫌いだった。しかし、1/12サイズになった雪見はそのドールハウスに住むことになった。
小さくなった雪見をせっせと世話する伏木野の犬のような従順さに、悪い気もしなくなってきた雪見。伏木野宅に侵入した猫との大乱闘の一件で、散らかった部屋で雪見を青い顔をして探し回った伏木野に本格的に雪見もほだされていく。


砂原糖子といえば、センシティブで切ない系の話を得意とする作家だ。しかし僕はこのひとのかいた、ちょっと現実離れした設定の話が好きなのだ(『斜向かいヘブン』とか『言ノ葉ノ花』もそう)。そんな奇妙な設定からこんなに良い意味でありきたりで切ない思いがあふれるものなのだと、一風変わった作品の方がその心のふれかたに大きな共感がある。この作品も小さくなってしまうというややもすると現実離れしすぎて足が地に着かない感じになりそう設定なのに、どんなときでも恋愛のいろはというか心情変化のいろははいっしょなのだなと想ってしまう。忘れられた約束を思い出して、 雪見が伏木野を意識していく課程。自分に大して真摯に振る舞う伏木野に雪見が自分の思い込みを修正していくところ、不可思議な設定でもひとのこころはそうやすやすと変わらないどころか、より強くそれが作用する状況になっている。加速する心と破綻に不安になる世界、急速な収斂が心を浮き上がらせていく。


何よりこの作品は、ちっちゃいのにちゃんとエロしてるのがいい。寧ろふつうにやられるより、無駄にエロいのがいい。ちっさい雪見をなめ回す伏木野の欲望が生々しくてエロティック。それなのに雪見のほうは、なんだか生命の危機を感じたりしてるのも面白い。サイズが違うというのは色々大変だなぁ、と当たり前のことを考えてしまったり。書いてるときの作者は楽しそうだと思える良い濡れ場だった。そしてキス。サイズ違いでは出来ないちゃんとしたキスが、またポイントとなる。大きさの違う恋のちょっとした違和感にちょっとした描写が心にひっかかる、そこもまたグッド。

今年の砂原さんの作品ではこれが一番好きでした。やっぱりうまいなってことで三位。まちろんの挿絵もキュートです。特に動物!