【小説5位】『深海魚は愛を歌う』久万谷淳・鵺(絵)(白泉社花丸文庫BLACK)【ウサギ】

深海魚は愛を歌う (白泉社花丸文庫BLACK)
深海魚は愛を歌う (白泉社花丸文庫BLACK)

白泉社 2009-05-20
売り上げランキング : 113789


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

老舗料亭の若旦那・領一郎は地出張中にバー「深海魚」で女装して歌う歌姫・千草に一目惚れをする。衝動的に花束を送り、メールを交換しはじめるが、突然連絡が途絶え…。
表紙とか帯(若旦那、女装歌姫に惚れる)でだいぶ損をしている気がします、この本。裏表紙の紹介も<老舗料亭の若旦那とバーの女装歌姫という「格差」LOVE>だし。萌え処はそこじゃない、そこだけど、そこじゃない!
多分この作品は若旦那・領一郎の成長物語なのだと思うです。環境に流されるまま経営者への道を歩んでいた若旦那。で、そこに絡んでくるのが歌姫・千草。バーで歌うのも女装するのも、千草が「歌う」ために選んだことで、その姿と向き合うことで領一郎の持っていた迷いが表面に出てくる。仕事も恋愛も未熟な若旦那が上司(母親)に認められようと必死で空回りしたり、必死で年下の男の子とメールをしたり、思い余って実家を飛び出して年下の恋人のところに逃げ込んでみたり。ぐるぐるしているのが可愛いのです。領一郎の仕事や実家での悩みと恋愛模様が絡み合いつつ進んでいくのがとても自然に描かれていています。千草が意外と男前だったり、物慣れてない若旦那が実はムッツリスケベだったりするギャップもまたいい味。バー「深海魚」での出会いやちょっとした会話のシーンが印象的だったりして、分量的にはそう多くないはずなのに千草の歌う姿が印象に残ります。女装姿云々ではなく、輝いている瞬間として。全体的には修羅場っぽいのもあるし、まあ、いろいろあるのですが、読み終わった時にはふ、と「よかったなー」と思える物語です。しかし表紙の若旦那はいい眼鏡だなぁ。(中の若旦那もいい眼鏡だけど。)

関連作品

便利屋には愛がある (白泉社花丸文庫)
便利屋には愛がある (白泉社花丸文庫)佐々木 久美子

白泉社 2008-01-18
売り上げランキング : 426286


Amazonで詳しく見る
by G-Tools