耽美か？エロか？ジュネット三ヶ月連続新人をレビューしてみる
文フリに向けて、2010年上半期ショートレビューを書いているのですが、そちらで漏れた作品・作家などをブログの方でテーマレビュー的な感じで紹介してみようと思います。
というわけで第一弾。2009年10月〜12月に連続刊行された、ジュネット新人作家三冊レビューです。
ジュネットといえば、エロ系BLの総本山なわけですが、その名前からも分かるとおり、いにしえの耽美雑誌「JUNE」を出していた出版社の後継でもあります。（「JUNE」自体は既に廃刊になっていますし、内容的には、全然断絶していますけれど。）
で、こんな帯が付いていたわけです。
お馬鹿系BLウォッチャーの自分としては、買うしか無い！という無駄な義務感にかられて買ってしまったわけですが、さてクオリティのほどは、というわけでショートレビューです。
- 『あぶない執事』 時逆拾壱
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これだけ帯が（というか本自体が）見当たらない…。
気弱なお坊ちゃまのところにお祖父様から派遣されてきたイケメン執事が、お坊ちゃまを教育して立派な後継者に…という名目であれこれする話。
ビジュアルからしても執事二人×坊ちゃんかと思いきや、想定外なことに、執事（非眼鏡）×執事（眼鏡）前提の執事（非眼鏡）×坊ちゃん×執事（眼鏡）です。ついでに攻執事はＳで眼鏡受執事はＭ。…と、設定を作り込んだまではよかったものの、消化しきれていないな、というのが個人的な印象。そもそも、眼鏡受執事はともかく攻執事の方は「執事」ってビジュアルじゃないんですよね。執事衣装着てればいいってものではない！と熱く主張させて頂きたい。ＳＭ設定も１，２回道具を登場させるくらいの役にしかたっていないし、主従愛もそんなに見えないし。イマイチです。
絵の方はすっきりしていて、そんなに癖はないので設定がハマれば萌えられるかも？ エロはジュネット的には中程度。
- 『ふしだらな撮影会』さおとめあげは
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飼育の館から女装少年を救い出せ！
囚われの愛玩少年、飼育の日々――
あらゆる禁忌がここにある！！
現代によみがえる！！正統派・JUNE魂の後継者
あやしげな豪邸に呼ばれたカメラマン。そこには女装姿の美少年が囚われていた。
設定とアイテムを揃えたら耽美になると思うなよ！としか言いようがない。禁忌ってナンデスカ。
ふしだらな撮影会ってどんだけふしだらなのさ…！と期待したのにそんなにふしだらじゃなかったし。（あくまでも相対基準で。絶対基準としては十分エロい。） 女装美少年は父親を愛していて、父親は息子に自分を捨てた妻を投影して憎みつつ愛していて、そこに現れたカメラマンが関係を変えていく、という素晴らしき予定調和展開、なんだけど何故か途中で父親のモノローグが出てきて色々台無しに。いや、そこは書いちゃ駄目だろ！匂わせるとこだろ！
絵は、カラーでは映えるけど、白黒だと結構残念。特に小さいコマでは完全に別人というか人間じゃないものが…。でも受の髪型と服装にだけは愛を感じる。そのわりに髪飾りはスタンプだけど。まあ、単行本でも後半に行くに従って少しずつマシになってはいますが。ちなみに、表題作は雑誌連載ではなく、ケータイでフルカラーコミック配信だったらしいです。想像するだにおそろしい…。
ほかの収録作品は、天然Ｍっ子が主人公の高校生ものにナチの軍人×日本人執事もの、料理人×ナルシストモデルもの、など。エロとしても耽美としても、こっちの方が作品としてのできはいいような気がします。
発展途上の作家、かな。まあ、最近としてはちょっと珍しい路線ではありますが、完成度はまだまだですね。しかし、これを「正統派JUNE」って売るのはどうなのか。ジュネット的に。もっとJUNEブランド大事にしようよ…。
- 『王子と執事 愚弟カップリング計画』片霧ライラ
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ええと、アオリを見て、正直「爆発しろ！」って思いました。執事をなんだと思ってますか！
という個人的こだわりはさておき、三冊の中ではいちばんできがいいです。
姉（腐女子）の経営するメイド喫茶でイケメン？執事として人気を集めていた弟。調子に乗った弟をこらしめるために、姉が雇ったのは王子系イケメン執事で…。
で、何故か王子はダメ執事のことが好きで、なし崩しで関係を持って、という展開。姉的にはそれもありらしい。（腐女子客が集まるから） ←このへんが多分「愚弟カップリング計画」
まあとにかく濃いエロ。何はなくともエロ。汁気。攻がなんかスイッチ入るとＳ入って言葉責め始めるのでＳＭ要素もあり。もうほんと、どこの男性向けだよ、ってくらい。……なんだけど、常にキラキラしてる王子がすごい（笑） 確かに王子だ。これは王子だ。そしてどう見てもアニメ髪の弟がいっそ清々しいくらいの駄目男で、そんな駄目男に一途な王子がまた可愛い。まあ、そんな王子もどう見てもド変態なんですけどね。帯にもあるとおり、各種シチュエーションをこなしながらも、ストーリーにもメリハリがあり、ギャグとしてのテンポもいいです。純愛では、絶対にないですけど！！
まあ、このカップリングはまだまだシチュエーションが作れそうなので、今後も期待ですね。
というわけで、エロなら片霧ライライチオシ。耽美ならさおとめあげはですが、正統派耽美を期待していると多分がっかりします。
