私家版「このBLがすごい(かも)!」中間報告と企画意図補足など。(または「このBLがやばい!」への不満)

やっとコミックのランキングレビューが終わりました。好きなものについて毎日レビューをするって予想以上に疲れますね…。情熱があればあるほどキツい(苦笑) だって好きなだけなんだもの。
で、まあこの1週間書いてみて、企画意図が分かりにくいかなー、などと思ってきたので、その辺補足してみようと思います。

「このBLがやばい!」のどこが微妙か

そもそも、ランキングに「面白味」がない。
このミスとかこのラノとか、「この○○」系の企画というのはその企画の「色」が出せてなんぼだと思うのです。だけど「このBLがやばい!」にはそれが無い、ように思える。投票者(このミス、このラノであれば投票者≒読者)の「このランキングにはこれを載せたい」「今からこれを売りたい」「是非これを多くの人に読んで欲しい」といった意図が見えない。意外性がない。「ああ、それ売れてそうだったよねー、売れたんだねー」と言いたくなるランキング。誤解を恐れずに言えば(2年目以降の)「本屋大賞」みたいなランキング。ベストセラーを更にベストセラーにしてどうするのか。BLなんて、現在進行形で成長している市場なのに。
2点目として、ランキング作成方法がどうも納得がいかない。

<集計方法>
※書店員・批評家・編集者をはじめとしたBL有識者40名にアンケートを実施。
1位=10点 2位=9点 3位=8点 4位=7点 5位=6点 で集計。
さらに、「となりの801ちゃん」メルマガ会員6000人・書店にてアンケートを実施。
回答者の答えを、1位=3点 2位=2点 3位=1点として加算しました。
<対象作品>
基本的に2008年10月〜2009年9月に発売されたタイトルが投票対象です。
(表紙裏より)

この時点で、何か納得がいかない。「BL有識者」ってナニ? って感じです。有識者と言えるほどの権威は、BL界にはまだいないと思うんですよね……。*1
ちなみに「有識者」さま40名の内訳は

書店員(11)・編集者(10)・フリーライター(4)・ブロガー(4)・漫画家(2)
三浦しをん杉浦由美子801ちゃん
大学非常勤講師・会社員・創作サークル代表・図書館司書・出版社営業・漫画家アシスタント

まず書店員と出版関係者で27人。有名人枠が3人。*2 最後のいろいろはおそらく編集者とライターの交友関係ではないかと思われますが…とりあえずは読者枠に入れてブロガーと合わせて読者が10人。
純粋な読者枠が4分の1。多いか少ないかは判断が分かれると思いますが、個人的には少ない、と思います。なぜなら、BLには「権威」が無いからです。だから、真面目にBLランキングを作ろうと思ったら、幅広い読者にこそ、アンケートを取るべき。*3 年齢層が20代後半以降に偏っていそうなのも、気になる。
とはいえ、ここまでなら単に編集者と書店員が売りたいランキングを作ってる、と言えなくもないのです。まあ、それならそれでいい。*4
が、しかし、ここでやってくるのが

「となりの801ちゃん」メルマガ会員6000人・書店にてアンケートを実施。

後半が、まともに機能しているとは思えないので、801ちゃんメルマガ会員。……どういう層だよ。どう考えてもアンケート母体として不適当だろ。更に6000人ってのは配った数であって有効回答数じゃないのも、ポイント。有効回答はベスト20に割り振られたポイントを見る感じでは500人いけばいいところです。……少ない。
「このBLがやばい!」では一般投票も受け付けているのですが、その内容は、

■対象期間中に発売されたBLコミック作品であなたのベスト作品は?:

■同じくBLノベル作品であなたのベスト作品は?:

※投票対象となるのは2008年10月〜2009年8月の期間中に発売されたBL作品です。
http://nextcomic1.blog78.fc2.com/blog-entry-36.html

そもそも2009年9月発売のBLはどこにいくのか、という突っ込みはさておき。*5
「ベスト作品は?」なんですよ。こう聞かれたら普通は1冊だけ挙げますよね? メルマガ会員6000人とやらにしたアンケートも、同種のものと思われます。*6 そりゃあね…、1冊だったら冒険はしませんわ。好きな、安心して推せる作品を選びますよ。マイベストというより、ファン投票的な。*7
あと、小説ランキングについては相方が言いたいことがあるらしいので、別に記事をアップしますが、一言で言えば全然「最新BLランキング」じゃない。*8
と、滔滔と考えるに、僕らは思うわけです。
 「何この信用ならないランキング」。*9

結局何がしたいのか

このミスのような、BLランキングを作りたいと思ったのです。投票者一人一人が意思を持って選りすぐりの作品をセレクトした、読者による読者のためのランキング。ファン投票じゃない「作品」ランキング。その結果として、「やばい!」と同じようなランキングになるなら、仕方ない。けど、きっと違ったランキングができるんじゃないかなー、と思います。
しかし、なかのひと2人が各自推薦作品を並べてみたところ……、ひとっつも被らなかったんですよー(苦笑) あたりまえと言えばあたりまえですが。そもそも新刊の部数が半端じゃない上に、それぞれ好みか違うのですから。*10 *11
そんな経緯で、とりあえず2人のランキングを晒そうということになりました。推薦作品の数は、このミスにならって6作品としました。*12
このブログを見て「え? 単に好きな作品を挙げるだけ?」と思った方。正解です。「ちょっと違うなー、自分はこれが良かったよ」という方。あなたのランキングを教えて下さい。知りたいです。*13
「このBLがやばい!」の強力なカウンターは、レビューなりブログなりを書いていらっしゃる方々の、情熱だと想うのです。

*1:栗本薫とかは、別として。というか栗本薫やおいとかJUNEとかの権威であってBLの権威とはちょっと違う。やおいだったら「歴史!」「教養!」みたいなのあるのかもしれないのだけれど、BLというのは商業的なカテゴライズで、そこからまだラノベのように思想形成までしていない、唯の娯楽小説だとおもうのです。

*2:801ちゃんを有名人枠に入れるのは…まあ、他にいれどころがない

*3:実際にこのミスやこのラノは読者枠がもっと広いはず。

*4:それはそれで別の意味で信用ならんランキングになりそうですが、方向性としては、分かる。

*5:投票期間は10月1日〜3日なので間に合わなかったという言い訳はきかないよ!

*6:その場合、有効回答数は少し増えますが、それでも700〜800でしょう

*7:僕らだってそんなよくわからないアンケートとられたら、そつのない回答をすると想う。

*8:しかも小説は有識者アンケートが20人だったり3位までしか投票できなかったりああもうどこから突っ込めばいいのか。とりあえず小説10位の得点は44点です。有識者の1位が10点一般の1位が3点。さて…?

*9:有識者投票の得票ランキングと最終的なランキングの関係なんかも、結構わけがわからなくて素敵なのですが。最終的には225点を獲得した『セブンデイズ』が有識者票は7点しかない、とかね。

*10:そもそも被りで買っていたのが4作品ぐらいでした。

*11:ちなみに、「やばい!」でランキングされているBLコミックは64作品。うち有識者さまが投票していない作品はゼロ、です。さすが有識者さま!

*12:なんか伝統的に、このミスでは6位にマイナーな本命かネタを入れるという文化があるので、それも少し真似しています(笑)

*13:もしも、万が一、ある程度数が集まれば集計なんかもしちゃう…かも。