【コミック2位】『薔薇の瞳は爆弾』ヤマシタトモコ（ビーボーイコミックス）【ウサギ】
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ヤマシタトモコは個人的に当たりハズレの激しい作家なのですよね。『恋の心に黒い羽』ではハズレ気味で、ちょっと離れていたら去年の『このBLがやばい！』で大プッシュだけどどうなの、とか思ってて、『恋の瞳は爆弾』で自分内大ブレイク。去年の『このBLがやばい！』1位の『くいもの処 明楽』も読んでみたら傑作だったよ読まず嫌いしてごめんなさい。（でも『このBL』は個人的に信用ならないのだよ。ていうか去年はあんだけプッシュしておいて非BL作品でも活躍しまくった今年は触れもしないとか、そこが信用ならないというんだよ。長編無かったから取り上げにくいのは分かるけど。それとも単に評価の定まった作家ってこと？ 作品多くて票が割れたのかも？）まあ、そんなわけでヤマシタトモコのここが好き、というのはどうも言えない。だって作品によっては本当に苦手なの。とかいいつつレビュー書くのに読み込んでいたらどの作品も好きな気がしてきたよ。どうしよう。あ、ちなみにこの口調はヤマシタトモコのモノローグ的な感じでお願いします。立板に水。テキストが延々平坦に流れていくかんじ。
ヤマシタトモコはなんだろう、恋の愚かさを描くのがすごく上手い作家さん。「好きだから」ただそれだけでその死を願ってしまい、残り香に2週間と3日も囚われ、公共の場でも妄想が止まらず、王子様が趣味の悪いゲイ（ドM）の趣味に合わせてしまう。あとは間、かな。ショートフィルムのような間。って作家を語っても作品を語ったことにはならないか。でもこれ短編集だし。
表題作は王子様がダメなゲイをどうやって落とすか、という話。ひたすら薔薇の花びらを散らしながら恋を訴える王子様と三津田の温度差の描き方、そして三津田が王子様の側に落ちる瞬間の描き方がもう秀逸。なんというダメ男。なんという王子様。
あと収録作で好きなのは「the turguoise morning」かな。9.11を挟んだアメリカ人写真家とアラブ人兵士の話。（テーマ「アラブもの」で描くのがこの作品というのがすごい。）恋心の闇に鬼神が忍び込む瞬間がせつない。エピソードとして好きなのは「絶望の庭」の冒頭。
「夢見ちゃいましたよ
<中略>
…好きな人の肉が皿に乗って出てきて
ああ食べなきゃなあって決意する…夢」
<中略>
（へんな夢だ
でも大切なのはたぶん
一目で彼の肉だとわかったことと食べなきゃいけないと決意しようとすること
…つまりそれくらい彼が好きってことだ
まいったね）
基本的に行為の描写は無いので、エロに抵抗ある人にもオススメできるかな。読み終わった瞬間に「ああ恋だなぁ」って浸れる短編集です。ほんとに。
ていうか関連作品も評価割れすぎで笑ってしまった。この作家さんはトライ＆エラーです。本当に。
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